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ラスト・イニング〜序章 9回裏〜



 一人の走者も出ないまま、ツーアウト目のランプが点った時、球場内にざわめきが走った。夏の高校野球県大会四回戦、茨城城東高校対常陽学園高校。得点は三対〇、先攻の茨城城東高校が三点をリードしたまま、九回の裏の攻撃を迎えていた。
 今年の夏は雨が多く、梅雨明け宣言が出た後もぐずぐずと雨雲が空にいすわり続けた。それでも晴れた日は気温が三十度以上に上がり、ぎらぎらした太陽が大地を容赦なく照らし出す。球場を囲む森林公園の木々の葉に残った昨夜の雨の水滴が、真夏の日差しに光り輝いている。
 常陽学園は県屈指の野球名門校であり、昨夏の甲子園出場こそ逃したものの、今年の春の選抜大会でベスト八に進出している。一方の茨城城東高校は、過去に県大会ベスト十六が最高の中堅校、下馬評は圧倒的に常陽学園有利であり、一回の表に、茨城城東が三番四番の連続タイムリーで二点を先制した時には、スタンドからちょうどいいハンデだと野次が飛んだ。
 マウンド上で、細身の左投手がキャッチャーのサインを覗き込む。長袖のアンダーシャツで額の汗をぬぐうと、一度投手板を外してロージンバッグに手を触れる。被安打三、四死球一、奪三振九、失点〇。茨城城東の先発投手は、この試合、ここまでを一人で投げぬいてきた。
 夏の陽光とグラウンドの土埃の中に、背番号一番がくっきりと浮かび上がる。茨城城東のエースが投じたこの日の百十四球目は、左バッターの内角低めの膝元に、一直線に飛び込んできた。ボールがキャッチャーミットに吸い込まれてややしばらくして、バットが空を切る音が空しく響く。ストライク、バッターアウト。試合終了。ピッチャーが小さく拳を握りしめ、崩れ落ちるバッターに目もくれずに立ち上がったキャッチャーが、白い歯を見せて笑う。

 茨城城東 200000100―3
 常陽学園 000000000―0
 茨:塚原―柳
 常:長谷川(和)・西村―後藤(翔)

 春選抜ベスト八 常陽学園敗れる 夏の高校野球県大会四回戦
 茨木城東三―常葉学園〇
 夏の高校野球県予選四回戦が県営野球場で行われ、春の選抜ベスト八の常陽学園が茨城城東高校に三対〇で敗れ、夏の甲子園出場を逃した。
 茨城城東は一回の表、三番塚原、四番柳の連続適時打で二点を先制。二対〇の七回裏には柳に今大会二本目となる本塁打が飛び出し、常陽学園を突き放した。
 投げては、茨城城東の左腕エース塚原が九回を散発三安打の好投で三塁を踏ませず完封。常陽学園は七回の裏、安打と敵失で二死一・二塁のチャンスを作ったが、後続が続かなかった。




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